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親切な担当相談員のおかげで、週に三回ほどハローワークに通っている。
問答無用でセミナーに予約を入れられまくっているからだ。
最近は顔見知りの職員もだいぶ増えて、「今日は寒いですね~」と挨拶しあう余裕も出来た。このままハローワークに就職したい。
セミナーの始まる時間と終わる時間はだいたいラッシュにかぶっている。
満員電車なんて見た事も無かった頃は、さぞかし中はうるさいんだろうなと思っていたけど、
意外や意外本物はかなり静かなものだった。誰も話している人なんていない。
8割はスマホに目を落とし、無表情で指先を動かしている。
LINE画面には表情豊かなキャラが楽しげに踊り、それを打ち込む人はクスリともしていない。
あとの2割は周りを遮断するように体を抱えて寝ている。
都会の暮らしは自然と離れ、人々の心は乾き…
地元にいる時はそう思っていたけど、自分も満員電車に揺られていると
「これが都会の自然なんだろうな」
と思う。掃いて捨てるほど人がいる自然。
東京で子育てするお母さんなんかは、「子供は自然で遊ばせたい」と思うらしい。
そもそも自然で遊ばせるという発想が不自然だから、やめた方がいいんじゃないかなと思う。
それとも田舎から見たディズニーランドが、都会から見た野山なのか。
東京の人が”東京の自然”を見つけにくくなってしまっているのは、
沖縄が沖縄を見失っているのと少し似ているような気がする。